乾燥しきった2022年の英国の夏、競馬界は最悪の状況に直面している。お粗末な出走頭数、賞金額への不安、優良馬の裕福な国への流出、入場者数の減少などが、競馬界に大きな痛手を与えているのだ。
これらのファクターに加え、物価高による生活費の上昇、そして賭事委員会(Gambling Commission)が英国の賭事客に課した経済力チェックがすでに目に見える影響を及ぼしており、競馬界を衰退のスパイラルに陥れる恐れがある。
馬券購入者・競馬場・ホースマン・馬主・ブックメーカーなど競馬界のあらゆる方面の代表者たちから、大きな打撃を被る前に何とかこの事態を打開したいという声が高まっている。
そして日が経つにつれ、競馬界のリーダーたちがこの状況に対して緊急に対応できない、あるいは対応するつもりがないように見えることにより、ますます不安が高まっている。
最近、競馬界の重鎮たちが大胆な提案を支持しているという励みとなる話題があるにもかかわらず、競馬界のリーダーたちはすでに2023年に向けて競馬開催日程の大幅修正は検討しないことを決定している。競馬界にとって開催日程の修正は最も強力な商業的テコ入れになるにもかかわらずだ。
プロジェクトチーム"クオリティジャンプレビュー(Quality Jump Review)"は勝負の厳しさに欠ける障害競走についての対策を1月に提言した。しかしその取組みさえも、より広範な競馬産業の戦略見直しの中で十把一絡げにされていることが判明している。
競馬産業の戦略とは何を指しているのか?発表されたのは6月1日だが、それから2ヵ月以上が経っても、付託事項・目標・タイムテーブルについて詳しいことはまだ分かっていない。
何か認識できていることがあるとすれば、戦略見直しについての作業はほとんど始まっておらず、プロジェクトの成果が目に見えるようになるには少なくとも何ヵ月もかかり、(仮に合意に至ったとしても)主な構想が実行に移されるのは2024年だということぐらいだ。
競馬界が直面している問題について解決策を見つけるのが簡単だとは誰も思ってはいない。しかし、新型コロナが大流行した年のあいだに起こったことと今日の緊急性の欠如を対比せざるをえない。
当時も現在と同じように、競馬界の景気は大きな脅威にさらされており、抜本的な対策を要することは業界全体のコンセンサスだった。そして当時も、各分野のグループがより大きな利益のために利己心を打ち棄てる必要性を感じていた。
当時と現在の違いは、2020年は競馬界のリーダーたちが主導権をにぎり大胆で早急な措置を取ったのに対して、2022年の問題は2024年まで対処されることがなさそうだという点である。
競馬界の利益のために、この無関心が取り返しのつかないほどのダメージを与えないことを祈ろう。
By Tom Kerr
[Racing Post 2022年8月2日「Racing is facing a perfect storm - so why is there no urgency from its leaders?」]