海外競馬情報 2023年09月21日 - No.9 - 4
キーンランド9月1歳セールで高まる日本人購買者の存在感(アメリカ)【生産】

 過去数十年にわたり、日本人購買者は9月にキーンランド(ケンタッキー州レキシントン)で開催される"世界の1歳セール"に参加するために、およそ17時間をかけて北大西洋を横断してきた。彼らのこのセリでの購買は、世界における日本競馬の着実な成長に大きな役割を果たしている。
 キーンランド協会のセリ担当副社長であるトニー・レイシー氏はこう語った。「米国の血統は日本の競馬&生産プログラムの発展に欠かせないものです。日本人は米国の血統が多様性とアウトクロス(異系交配種)をもたらすという点でどれだけ重要かを認識しています」。
 日本人購買者はブック1・ブック2の取引において最高級の馬に注目する。昨年は、常連の森秀行調教師が米国三冠馬ジャスティファイの半弟を120万ドル(約1億7,400万円)で購買した。ワンチャンプと名付けられることになるこのカーリン牡駒は、ジョン・ガンサー氏により生産され、グレンウッドファームにより1日目に上場されていた。
 森調教師は2022年のこのセリで5頭を総額254万5,000ドル(約3億6,903万円)で購買し、日本人の中のトップバイヤーとなった。キーンランドを訪れた日本人購買者は合計35頭を総額1,251万7,000ドル(約18億1,497万円)で購買し、購買馬の平均価格は35万7,629ドル(約5,186万円)だった。これらの1歳の購買馬のうち5頭がスペンドスリフトファームの有力種牡馬イントゥミスチーフの産駒であり、総額は246万ドル(約3億5,670万円)にのぼった。それに迫ったのが、産駒3頭が総額209万5,000ドル(約3億378万円)で購買されたカーリンである。購買馬は日本に渡って現在2歳となり、7頭が出走して3頭が勝ち上がっている。
 今年はさらに日本人購買者の存在感が強くなると予想されている。
 その要因のひとつは、米国のビッグレースで日本馬が大活躍しているのを見られるようになっていることだ。2021年ブリーダーズカップ開催でラヴズオンリーユーがBCフィリー&メアターフ(芝G1)、マルシェロレーヌがBCディスタフ(G1)を制している。
 レイシー氏は、「今年は大挙して来場されるでしょう。日本からより広範囲の購買者が現れ、セールの半ばまでゆっくり滞在することを予定しているようです。いっそう多様で幅広いタイプの馬を購買されるつもりなのでしょう。励みになりますね。双方にとって素晴らしいことです」と述べた。
 キーンランドで日本人購買者の窓口を務めるケイト・ハンター氏はレキシントンにいるチームに代わって購買者のニーズに応えるようにアシストし、日本人が求める市場を把握するように努める。
 レイシー氏はこう語った。「ここ数年、日本人購買者は米国の市場を強く支持してきました。キーンランドはそれをしっかり受け止めています。私たちは日本人購買者の窓口となるようにハンター氏を派遣しています。また、チップ・マゴーイ(セリ分析部長補佐)は今年すでに3回日本に出向きました。私たちは日本の市場のために貢献し、変化・ニーズ・要件を把握していることを確信したいのです。どの市場においてもニーズやダイナミクスは変化しています」。
 2021年の9月1歳セールで日本人購買者が一番多く手に入れたのはジャスティファイ産駒だった。9頭が総額434万ドル(約6億2,930万円)で購買された。バカリブラッドストック社により1日目に上場されたジャスティファイの牡駒(母ステイクラシサンディエゴ)は、森調教師により95万ドル(約1億3,775万円)で落札され、ソラカラノチカラと名付けられている。今年3歳となり2戦したがいずれも着外だった。森調教師はジャスティファイ産駒9頭を含む12頭の1歳馬を441万5,000ドル(約6億4,018万円)で購買し、日本人の中のトップバイヤーとなった。
 その年、日本人購買者は35頭を総額988万ドル(約14億3,260万円)で購買し、購買馬の平均価格は28万2,286ドル(約4,093万円)だった。それらの馬は現在3歳となり、34頭が出走し15頭が勝ち上がっている。
 2020年の新型コロナ感染拡大時には、移動制限のためにセリ会場で日本人の姿は少なかったが、彼らは16頭を総額451万ドル(約6億5,395万円)で購買した。長谷川祐司オーナーが2頭を総額157万5,000ドル(約2億2,838万円)で購買し、日本人の中のトップバイヤーとなり、産駒2頭が総額115万ドル(約1億6,675万円)で購買されたタピットがトップサイアーとなった。長谷川氏もフィフティシェビーと名付けられることになるタピット牡駒を82万5,000ドル(約1億1,963万円)で購買している。
 現在それらの購買馬は4歳となり、15頭が出走し13頭が勝ち上がっている。
 レイシー氏はこう語った。「グローバルな観点から、世界各地からのエネルギーを意識しています。キーンランドは国内向けの市場ではなく、かなり国際的な市場なのです。そこで日本人購買者は不可欠な存在です。私たちの仕事は生産者と馬主の延長線上にあると考えています。そこでアドバイザーとして生産者に助言し、市場の傾向や、どのような馬に需要があるのかについてアドバイスしています。そうすることで人々の意識は深まります。そして私たちは彼らの需要とニーズを念頭に置いてセリカタログを作るようにしています」。
 有名繁殖牝馬や一流種牡馬についてはいちいち紹介する必要はないものの、キーンランドの役割は1日目から12日目を通じて多様な購買者を飽きさせないようなカタログを編集することにあると考えている。そして、すべての購買者のお眼鏡にかなうようダート血統でもターフ血統でもあらゆる価格帯の馬を提供することにしている。
 レイシー氏はこう語った。「どの日も多様性があるので、誰もがぴったりの馬を選ぶことができます。どの日もどのブックもひとつの分野に偏っているのであれば、購買者を失ってしまう可能性があります。彼らは帰途についてしまうでしょうね。時間は無駄にできませんから。血統にかぎらず多様性は不可欠です。同じ日に同じ種牡馬の産駒ばかりを提供するわけにはいきません。それらの産駒が互いに競合し、それぞれの売上げを奪い合ってしまうからです。ターフ向きの馬を探しに来た人が一日中ダート馬ばかりを見ていたら、退屈して撤退してしまうでしょう。それぞれのセリ部門で常に多様な上場馬群を購買者の前に披露しつづけることは、キーンランドのセリの各開催日や各ブックを策定するうえでとても重要なのです」。

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By Lauren Gash
(1ドル=約145円)

[bloodhorse.com 2023年9月8日「Keeneland September Sale Critical to Japanese Successes」]