HISA(競馬の公正確保と安全に関する統括機関)は、出走レースの発走前48時間内の馬へのフロセミド(別名ラシックス)投与についての3つの科学的研究に資金提供する。馬の健康と競馬の公正確保に及ぼす影響についての研究も含まれる。
HISAのフロセミド諮問委員会(Furosemide Advisory Committee:FAC)がこれら3つのプロジェクトを推薦し、HISA理事会が資金提供を承認した。
HISAは「競馬の公正確保と安全に関する法律(HISA)」のもと、フロセミドに関する堅実かつ厳密な科学的研究に資金提供することが求められている。FACはこれらのプロジェクトによりもたらされた情報を、現行のフロセミドに関するルールを改正するかどうか、どのように改正するかについて、今後HISA理事会に勧告するさいに参考とする。HISA理事会は全米小児病院(Nationwide Children's Hospital)、フロリダ大学獣医学部(University of Florida College of Veterinary Medicine)、ワシントン州立大学(Washington State University)で実施されるこれらのプロジェクトに対し、今後2年間で77万3,500ドル(約1億1,603万円)の資金を提供することを承認した。
HISAは2023年8月に提案依頼書を発表した。提出された提案書のうち、以下がFACにより推薦され、HISA理事会により資金提供が承認されたものである。
フロセミド治療と競走馬の健康と福祉
研究責任者:アマンダ・ウォラー博士(BSc, PhD)
[全米小児病院 臨床・トランスレーショナルリサーチセンター研究科学者]
この研究では、競走当日のフロセミド投与がサラブレッドの健康と福祉、および長期的な競走成績に及ぼす影響を調べる。競走前のフロセミド投与と予後不良との関係を評価するための分析が行われ、「2歳時に全レースをフロセミド投与下で出走した馬」と「2歳時に全レースをフロセミド非投与下で出走した馬」のパフォーマンス指標(生涯獲得賞金/レースキャリアの長さ/生涯出走回数/年間出走回数/着順/平均スピード指数)が比較される。
フロセミドの連続投与の影響
研究責任者:サリー・アン・L・デノッタ博士(DVM, PhD, DACVIM)
[フロリダ大学獣医学部大型動物臨床サービス臨床助教授]
この研究では、運動する成サラブレッド馬へのフロセミドの連続投与が電解質恒常性・副甲状腺反応・尿中電解質排泄に及ぼす影響を調べる。またDEXAスキャンやオステオプローブ(OsteoProbe)などの最小侵襲性測定法を用いて、連続投与が骨密度や骨強度に及ぼす影響も検査する。
フロセミド・運動誘発性肺出血(EIPH)・レースキャリア
研究責任者:ウォリック・ベイリー博士(BVSc、PhD、DACVIM)
[ワシントン州立大学獣医臨床科学科教授]
この研究では、重度の運動誘発性肺出血(EIPH)がレースキャリアとより広範にわたる競馬産業の健全性に与える影響について調査する。その際、フロセミドによる定期的な治療が出走回数を増やし、より長いレースキャリアにつながるかどうかを評価する。また、2歳馬へのフロセミド投与を禁止することによりレースキャリアの長さや生涯出走回数に与える潜在的な影響を調べる。この研究では、重度のEIPHがその後の出走回数、レース間隔、場合によっては重度のEIPHと診断されてから引退までの期間にどの程度影響するかも明らかにする。
研究者たちは2026年1月31日までに、最終報告書をFACに提出しなければならない。
FACの議長であるスコット・パーマー博士(VMD)は、「FACは提案依頼書に応募してくれた専門研究者に感謝しています。またこの重要な研究において、全米小児病院、フロリダ大学獣医学部、ワシントン州立大学と提携できることを楽しみにしています。サラブレッドの生涯にわたる健康と福祉は、私たちの最優先事項です。この研究は驚くべき存在であるサラブレッドと競馬の公正確保を守るための方針を確立にするのに役立つでしょう」と語った。
By HISA Edited Press Release
(1ドル=約150円)
[bloodhorse.com 2024年1月31日「HISA to Fund Three Scientific Studies on Lasix Use」]