チャーチルダウンズ社(CDI)は今年の第150回ケンタッキーダービー(G1)のあと、投資家向け報告書(Investor Presentation 全68ページ)を発表した。このうち9ページにわたり、今年のケンタッキーダービーとイベント全体の成功が概説されている。
この中で、成功に結びついたCDIの施策が指摘されている。それは地域社会や放映パートナーのNBCとのあいだに築いた強い提携関係、競馬場施設へのさらなる投資、世界中からの参加機会の増強などである。
こうしたすべての取組みは馬券への関心を高めるのに貢献した。ダービーウィークの発売金はコロナ禍の2020年から毎年増加している。2021年の発売金はコロナ禍前のレベルの3億1,500万ドル(約488億2,500万円)に返り咲き、その後3年間はずっと増加し、今年は4億4,700万ドル(約692億8,500万円)にまで達した。2021年から42%増加したことになる。
NBCはダービーを特集するという絶対確実なアプローチを取り、金字塔となる今年のダービーを前に関心を高めるのに成功した。『トゥデイショー』、『トゥナイト・ウィズ・ジミー・ファロン』、『ケリー・クラークソン・ショー』、『ザ・プレイヤーズ』、『アクセス』、『E!ニュース』といった番組でダービー特集が組まれた。こうした努力が実を結び、ケンタッキーダービー中継の平均視聴者数は1,670万人、ピークで2,010万人に達した。これは1989年以来最多の視聴者数である。なお、マスターズ(ゴルフの選手権)の最終ラウンドの平均視聴者数は960万人だった。
競馬界全体が若年層をひきつけるのに苦戦しているが、ケンタッキーダービーは例外だった。入場者の29%が18歳~34歳で、31%が35歳~54歳だった。
顧客の所得レベルについては、チケット購入者の72%が年収10万ドル(約1,550万円)以上、22%が年収25万ドル(約3,875万円)以上だった。この顧客層がプレミアシートを維持している。これらのプレミアチケットの売上げが、チャーチルダウンズ競馬場のダービーウィークの入場券売上げの約60%を占める。CDIによると、指定席の1/3以上は「個人席ライセンス」や「スイート契約」をはじめとする契約により、有効期限が3年~7年でキャンセル不可のものとなっている。
CDIはチャーチルダウンズ競馬場のほぼ継続的な改装は実を結んでいると考えている。その点を考慮して、報告書は2025年4月までに、競馬場にさらに6,000万~8,000万ドル(約93億~124億円)を投資するとしている。今後の主なプロジェクトとしては、指定席エリアの追加、馬場内席の増設、ホテル建設などが挙げられる。以前のホテル建設計画は、ファーストターン(1・2コーナー間)へのスタンド建設が優先されたため断念されていた。
世界各地でダービー出走権獲得レースが行われ、とりわけ日本と欧州で「ロード・トゥ・ザ・ケンタッキーダービー」が盛上りを見せたことから、海外からの参戦馬・国際的な顧客・発売金が増え、スポンサーのマーケティング機会を広げられたことも、報告書に記されている。また、今後数年で出走権獲得レースはさらに拡大する可能性が示唆されている。
By Frank Angst
(1ドル=約155円)
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[bloodhorse.com 2024年5月28日「Dollars & Sense: Documenting Kentucky Derby's Strength」]