ブラジルの二大競馬場のひとつ、サンパウロのシダーデジャルディン競馬場が危機にさらされている。サンパウロ市議会は市内での競馬を禁ずる法案を可決したのだ。
6月26日(水)、シェシェウ・トリポリ議員が提出した法案は全会一致で可決され、現在はリカルド・ヌネス市長の承認を待っている。これは競馬界の将来に対する懸念を広く呼び起こすことになりそうだ。
地元メディアによれば、トリポリ議員はこの法案可決を「ブラジルにとって歴史的な瞬間」と呼び、ヌネス市長の支持を得られるものと考えている。そして「人間の娯楽と金儲けのために走る動物はもはや存在しないのです」と述べている。
この決定は、サンパウロジョッキークラブが統括するシダーデジャルディン競馬場("ガーデンシティ競馬場")でのレースを終わらせるものとなりそうだ。
シダーデジャルディン競馬場では1941年に初めてレースが実施された。この法案が承認されれば、将来の計画には、トリポリ議員が「文化と娯楽の拠点」と呼ぶ市営公園の建設が含まれる。
トリポリ議員はまず2年前に、スポーツ活動、とりわけ賭けを伴うものにおいて動物の使用を禁止しようとした。また競馬場の土地の開発を支持する人々は、サンパウロジョッキークラブが市に対して負っているとされる負債を指摘していた。
法案によれば、法律が公布されてから180日以内に競馬運営を停止しなければならない。
英国でリーディングジョッキーに3度輝いたシルベストル・デソウサ騎手(43歳)はシダーデジャルディン競馬場で騎乗技術を磨いた。そして今回の動きを"大惨事"だと述べた。
「シダーデジャルディンでキャリアをスタートさせたので、閉場となればきわめて残念です。ブラジルはとても広大で、膨大な数の馬がいます」。
「たくさんのホースマンがそこでキャリアをスタートさせてきました。リオデジャネイロのガベア競馬場と並んでブラジルの二大競馬場のひとつなのです。ほかにはいくつかの質素な競馬場がありますが、とても小規模で、かろうじて存続できている状態です」。
「主要競馬場のひとつを失うことは大惨事だと言えるでしょう。かなりの損失ですし、たくさんの雇用が失われることになるでしょう」。
「あそこで騎乗していたときのことを懐かしく思い出しますね。トップクラスの馬主たちがいて、出走頭数は多く、迫力のあるレースが繰り広げられていました。ほかの場所にも民間の調教センターがありますが、そこでも調教が行われていて千頭以上が在厩していました」。
サンパウロ大賞(G1 芝2400m 3歳以上)はブラジルで最も重要なレースのひとつであり、シダーデジャルディンのレーシングカレンダーの目玉である。この競馬場では主に土曜日に競馬が実施されている。
5月19日に実施された今年のサンパウロ大賞では、ケンロヴァ(牝4歳)がオバタイエに3½馬身差をつけて優勝した。なお、オバタイエは後にブラジル大賞(G1)を制している。
デソウサ騎手は、「20年以上前にサンパウロで騎乗していたとき、1日に15~16レースが施行されていて素晴らしい雰囲気でした」と語った。彼はブラジルを離れたあと、2014年にゴドルフィンのアフリカンストーリーでドバイワールドカップ(G1)を制し、今年はエルマルカで英1000ギニー(G1)優勝を果たしている。
「シダーデジャルディンは大きくて走りやすい競馬場で、コース形状も素晴らしいものです。重要なレースの日には大勢の観客が詰めかけます。それでも、ブラジル競馬界は財政的な問題を抱えているようです。競馬場の土地は開発計画を進めるうえでとても価値があるので活用が求められているのかもしれません。ただ、確かなことは分かりませんね」とデソウサ騎手は付け加えた。
By James Burn
[Thoroughbred Racing Commentary 2024年6月27日
「Brazilian bombshell: racing in Sao Paulo under threat as bill prohibits betting on animals」]