海外競馬情報 2024年07月19日 - No.7 - 2
サラトガでベルモントSを開催したことで大きな経済効果(アメリカ)【開催・運営】

 NYRA(ニューヨーク競馬協会)は7月11日(木)からサラトガ競馬場でふたたびレースを施行することに意気揚々としている。サラトガスプリングズ市(ニューヨーク州北部)もまた、競馬のオアシス、サラトガ競馬場でのベルモントS開催(6月6日~9日)が大成功を収めて満悦感に浸っている。

 最終的な業績はまだ報告されていないが、サラトガ郡商工会議所の会頭であるトッド・シムカス氏は「地元経済界は好調な1週間を過ごした」と語った。ベルモントS(G1 6月8日)が初めてサラトガ競馬場で施行され、4日間の競馬祭典はこの競馬場の高い基準からしても稀に見る活況だったのだ。

 シムカス氏はこう述べる。「とてつもない興奮が生まれ、街中がすごく活気づいていましたね。サラトガ競馬場にはベルモントS当日に5万人が入場したそうですが、それを超えていたのは間違いありません。これまでサラトガで見たことのないような大勢の観客が詰めかけ、どこもかしこも2015年のアメリカンファラオが優勝したトラヴァーズS(G1)以来の盛り上がりを見せていました。6月7日(金)には過去最高の売上げを記録したという事業者もありました。私たちにとって大成功の4日間でした。来年に向けて調整が必要なところはほとんどありません。それにこのようなビッグイベントを初めて開催してわずかな調整だけですむのであれば、すごいことです」。

 NYRAにとっても大当たりの4日間だった。ベルモントS当日の入場者数が5万人ほどにとどまったことは別として、4日間の発売金は前年を6,000万ドル(約96億円)上回る1億9,740万ドル(約315億8,400万円)にのぼった。特にベルモントSウィークの木曜日と金曜日の発売金合計はこれまで2,900万ドル(約46億4,000万円)だったのが、サラトガでは5,670万ドル(約90億7,200万円)に跳ね上がった。

 商業地区の業績も大抵は物価の高騰に後押しされて、明るく陽気なものとなった。またビッグレースを開催したことによって、このようなことはしばしば起こるものだ。

 シムカス氏はこう続けた。「小売店やレストランから、深夜まで営業していたので売上げが伸びたという話も聞きました。金曜日に盛況だったのは、多くの人々が木曜日に街に到着して翌日の夜に外出したからです。金曜日に過去最高の売上げを記録したレストランもありました。だけどその場合は深夜まで営業していたのでしょう。この時期の一般的な閉店時間、午後9時~10時に店じまいしていれば、売上げはそれほど伸びなかったはずです。そして日曜日には商業地区がトラヴァーズSウィークのようににぎわいました。人々は繁華街に繰り出し、ショッピングや食事を楽しんでから街を離れました」。

 シムカス氏は、競馬祭典の経済効果は予測されていた5,000万ドル(約80億円)を上回ると確信していると語った。

 「私たちは事前に、地域全体で5,000万ドル以上の経済効果があるだろうと言っていました。2年前に実施されたサラトガ競馬場の経済効果調査をベースに、実際の計算に基づいたものです。40日間の競馬開催で3億7,000万ドル(約592億円)の経済効果があると見積もっていました。つまり、4日間であればその10%の3,700万ドル(約59億円)の経済効果があるということです。しかしかなり多くの人が来場し、宿泊費が高騰することは織り込み済みでした。ベルモントS開催のために来る人たちは通常よりも多くのお金を使うだろうと考えていました」。

とりわけ宿泊費は高騰。人気あるアデルフィ・ホテルは3泊で1万4,000ドル(約224万円)をやや上回る価格を提示していた。その結果、街のあちこちで空室が出たが、ホテル側にとっては経済的にうまくいったようだ。

 シムカス氏は、「相当に高い宿泊費での80%の稼働率は、この時期として過去最高の収益をもたらすのです。来年もこれと同じ戦略をとるのかどうかわかりませんが、1年目は上出来でした。この盛り上がりのレベルが来年の基準値を決めるうえで役立つと思います」と述べた。そして、2025年ベルモントSもサラトガで実施されること、そしてベルモントパーク競馬場は新施設建設と馬場敷設のために少なくとも2026年までは門戸が閉ざされることについて言及した。

 ベルモントSウィークがいかに来場者を惹きつけていたかを示す紛れもない兆候のひとつが、6月5日に繁華街で行われたブルース・トラヴェラー(米ブルースロック/ジャムバンド)の無料ライブだった。脇道で聞いていた人々も入れると、大観衆は1.5万人~2.5万人にのぼったと推定された。

 シムカス氏は、「ブルース・トラベラーは、『ステージに上がったときに観衆のあまりの多さに衝撃を受けたよ』と言っていましたね。彼らはとても喜んで、契約時間よりもずっと長く演奏しました。その場にいた人たちはかなり盛り上がっていましたね」と語った。

 ベルモントSウィークの祝祭気分が高まったもうひとつの兆候はアルコール消費である。シムカス氏の見積もりでは、アルコール飲料の売上げは昨年6月の同じ週に比べ80%も跳ね上がったという。

 おそらく、サラトガでのベルモントSウィークの最も期待できる点は40日間の夏開催(7月11日~9月2日)への波及効果だろう。

 シムカス氏はこう続けた。「地域社会にアピールするために無料ライブをはじめ、さまざまなイベントを行いたかったのです。ベルモントSウィークは夏開催に向けたプロモーションのひとつだと考えていましたね。そのために投入した資金は、通常であれば夏開催で使うはずのものでした。この夏にサラトガに行きたいという気持ちになってもらうことが私たちの目標だったのです」。

 シムカス氏は、この地域と競馬場に多くの新しい観光客が訪れたと語った。これは非科学的だが論理的なサンプリングに基づくものだ。

 「多くの新しい顧客がやって来たことには気づいていました。駐車場やシャトルバス乗り場の場所についての質問が一番多かったからです。競馬場に一度も来たことがない人たちは近くの芝生広場に駐車できることを知らないのです」。

 全般的に見て、ビジネス界は来年サラトガ競馬場で2回目として施行されるベルモントSを心待ちにしているに違いない。

 シムカス氏は、「ニューヨークタイムズ紙とニューヨークポスト紙には1日違いでサラトガと競馬に関する前向きな記事が掲載されました。この2紙がこれまで同じような記事を書いたことはないと思います。ベルモントSウィークがおしなべて成功を果たしたことを物語っていますね」と付け加えた。

By Bob Ehalt

(1ドル=約160円)

[bloodhorse.com 2024年6月27日「Belmont at Saratoga a Huge Success for Spa Businesses」]