パディントン(父シユーニ)とカルディーン(父フランケル)は注目のシャトル種牡馬としてニュージーランドにやって来ることとなり、タスマン海の両側の生産者から歓迎されている。今年これから南半球での初年度の種付けを開始する2頭は、豪州で頭角を現わすと見込まれている。
G1・4勝馬パディントンのシャトルは3月に発表された。繋養先となるウィンザーパークスタッドのロドニー・シック氏は本紙(ANZブラッドストックニュース)に対し、すでに種付予約はいっぱいだと述べた。
「パディントンを導入するにあたり盛大な昼餐会を開いたのですが、そこだけで60件の予約が入ったと思います。それでも電話は鳴りやまず、発表後3日以内に満口になりましたね」。
パディントンは3歳シーズンの幕開けでネース競馬場の地味なハンデ戦で勝利をあげ、6連勝の道を歩みだした。5月のテトラーチS(L 約1600m)でステークス初勝利を収め存在感をあらわし、次に愛2000ギニー(G1 約1600m)を制して昇級戦も難なくこなした。
そして、数々の種牡馬を送りだしてきたセントジェームズパレスS(G1 約1600m ロイヤルアスコット開催)でふたたび傑出馬であることを証明し、エクリプスS(G1 約2000m)では古馬を撃退した。またサセックスS(G1 約1600m グッドウッド)では距離をマイルに戻してG1・4勝目を挙げ、これが最後の勝利となった。
シユーニ(父ピヴォタル)の世界クラスの種牡馬としての名声は、南半球での実績によってさらに強化されている。44頭の産駒が出走し、26頭が勝利をあげた。その筆頭がG1優勝牝馬アメリアズジュエルである。
シユーニの影響とパディントンの素晴らしい競走成績が相まって、ウィンザーパークでの初年度を迎えるにあたり、パディントンは人気を集めるだろうとシック氏は考えている。種付料は3万5,000NZドル(約333万円)。
「信じられないほど素晴らしい馬ですね。ニュージーランドの生産者たちはワクワクしています。なにしろ、欧州の偉大な種牡馬シユーニの産駒ですからね。豪州で出走したシユーニ産駒の成績には目を見張るものがあります。だからとても楽しみです。パディントンは驚異的な馬で、クールモアとの関係を拡大できるのも嬉しいことです。豪州競馬にぴったり合うだろうと信じてやみません」。
パディントンの母モダンイーグルはモンジュー(父サドラーズウェルズ)を父にもつリステッド勝馬だ。シック氏はパディントンの牡系も牝系も熟知している。2000年代初めにモンジューがシャトルされ、ウィンザーパークで供用されていたからだ。
「光栄にもクールモアとはいい関係を築いてきました。過去25年間の大半においてハイシャパラルやモンジューなどを供用してきたのです。モンジューはこれまで見たどの馬よりも道中のスピードが速かったと思いますし、パディントンも同じようなタイプです。素晴らしい末脚をもっていますし、シユーニの後継でありながら牝系にモンジューがいるというのはとてもエキサイティングなことです。なぜなら、その血統が南半球でうまく機能することが分かっているからです」。
「とても丈夫で魅力的でバランスがとれていて、素晴らしい動きをします。シユーニほど見栄えのいい馬はそういませんが、パディントンは父親譲りですね。それに優れた素質と能力をそなえているので、種牡馬として将来かなり有望でしょう」
「彼は68日間でG1・4勝という信じられないことを成し遂げたのです。そのなかには世界でもトップクラスの種牡馬を送りだすレース、セントジェームズパレスSが含まれます。この馬が達成できなかったことはほとんどないでしょう」。
一方カルディーンは昨年、英2000ギニー(G1 約1600m)を快勝してからセントジェームズパレスSに挑み、パディントンの2着に入った。
カルディーン(父フランケル 父父ガリレオ)は南半球シーズンにケンブリッジスタッドで供用される。この牧場の販売・種付権利担当主任スコット・カルダー氏は本紙に対し、生産者たちの反応は日に日に強まっていると述べた。
「カルディーンの導入を発表したとき、生産者や顧客がみんな興奮していたのは間違いありません。種付頭数は120頭までと決まっていて、少頭数なので、発表後すぐに空きがなくなってしまうことが明らかになりました」。
「私たちはたいていシンジケートをつくりますが、彼の場合はそうせず、3年間のパッケージを作りました。すごく人気を集めています。残りは限られています」。
パディントン同様、この4歳馬も通算10戦5勝(うちG1・2勝)という素晴らしい競走成績を挙げている。世界中で843頭のフランケル産駒が出走しているが、カルディーンはそのなかで7位となっている。
2022年にデビューして、デューハーストS(G1 約1400m ニューマーケット)優勝を含む4勝をあげた。翌年に英2000ギニーを制し、過去50年間でこの2レースの栄誉あるダブル制覇を決めた9頭目の馬となった。また、デューハーストSと2000ギニーの両方を制した父子はフランケルとカルディーンだけだ。
カルダー氏はこう語った。「カルディーンを迎えることが決まったとき、とても興奮しましたね。生産者のみなさんもこの感情を共有してくれるだろうと確信していました。フランケル産駒というのは、どこの牧場でも欲しいものリストの上位にくると思います。フランケル産駒として2歳時に好成績をあげ、クラシック競走で勝ったのですから、彼のプロフィールはとりわけニュージーランドにとっては完璧です」。
これらの若い種牡馬を使おうと、ふたつの牧場には豪州の生産者からも大きな関心が寄せられている。カルダー氏はニュージーランド生産界にとって前向きなことだと考えている。
「ケンブリッジスタッドに来て以来、豪州の繁殖牝馬に国境を越えてニュージーランドに来てもらうのにいつも苦労していました。しかしアルマンゾルやハローユームザインがシャトルされてきたことで、とてもうまくいっています。でも、それは豪州の購買者がこっちのセリにやって来て調達する方法でした」。
「しかし、カルディーンは豪州からはるかに多くのサポートを受けています。私がケンブリッジスタッドで関わったどの種牡馬よりも人気があります。両国にとって彼のプロフィールがいかに優れているかを裏づけるものです。すでにここには豪州から送り込まれた繁殖牝馬がいますし、来月あたりにはさらに多くの繁殖牝馬がやってくる予定です」。
「また、多くのニュージーランドの生産者が今年は国内に繁殖牝馬をとどめています。現在国内で供用されている種牡馬の質の高さを証明するものです」。
シック氏は、豪州の反応は最上級のものであり、ウィンザーパークもパディントンを大いにサポートするだろうと語った。
「豪州から多くの繁殖牝馬がやって来ますが、いただくご感想は驚くほど素晴らしいものです」。
「パディントンが豪州ではなくニュージーランドに来ることにとても驚いている人は多いと思います。ただ、クールモアとは長年にわたって素晴らしい関係を築いてきており、この種牡馬にとって本当に良いスタートを決めるのに理想的な基盤をもたらすと考えます。いい牝馬が揃っていますし、この馬にぴったりだと思いますね」。
ニュージーランド競馬界は、タブNZ社(TAB NZ)とエンテイン社(Entain)の戦略的パートナーシップにより賞金に2,030万NZドル(約19億2,850万円)という巨額が投入されることになった。カルダー氏もシック氏もニュージーランドの競馬と生産はここ数年で最も健全な状態にあると信じている。
シック氏は「エンテイン社がニュージーランド市場に参入したことで、賞金は倍増しました。この国にとってかなり将来性が見込めるように思います」と述べた。
一方、カルダー氏は前向きな変化を促進するために牧場は"自らの役割を果たさなければならない"と語った。
「ニュージーランド競馬界では全体的にとても前向きなことが起こっています。賞金は増加しており、この国の実績のある種牡馬はとりわけ強く、ニュージーランド競馬界には本当の勢いがあると思います」。
「種馬場として一翼を担わなければなりません。そのひとつはできるだけ優秀な種牡馬を導入することです。カルディーンのような馬がやってくることは、ニュージーランドにとってまったくの快挙であり、この国でサラブレッドを生産してきた方法と、繋養している繁殖牝馬の質からすると、カルディーンは長期的な成功を収める素晴らしいチャンスに恵まれると心から信じています」。
2頭の種牡馬は8月初めにニュージーランドに到着する。
By Lidia Symonds
(1NZドル=約95円)
[Racing Post 2024年7月12日「Shuttlers Paddington and Chalden well received ahead of their maiden seasons at stud」]