海外競馬情報 2025年03月27日 - No.12 - 1
フロリダ下院委員会、デカップリングを推進(アメリカ)【開催・運営】

 サラブレッド競馬を行う競馬場が開催を義務づけられることなく、カジノとカードルームの運営をできるようにするフロリダ州の法案(デカップリング)は、世論の強い反対にもかかわらず、3月17日(月)、13対7の賛成多数で下院通商委員会を通過した。

 下院法案105の提案者であるアダム・アンダーソン議員は、その日の午後の公聴会で法案の修正点を説明した。ガルフストリームパーク競馬場を運営するストロナックグループ傘下の1/STレーシング社が、この法案を推進している。

 アンダーソン氏によると、修正法案は、ガルフストリームパークとタンパベイダウンズの両競馬場がゲーミング事業と競馬の開催を別々に運営することを認める一方、「サラブレッド産業への三つの支援 」を盛り込んでいるという。

 アンダーソン氏は、多数のサラブレッド業界の利害関係者と協議した結果、以下のような修正を認めるに至ったという。

 ●  どの競馬場も、経営陣が競馬の興行をやめる選択した場合は、3年前に通告することを義務づける。そして、そのような通告ができる日付けは、最も早くて2027年7月1日とする。

 ● 「サラブレッド業界に柔軟性を持たせ、新たな可能性を創出する」ために、既存のサラブレッド競馬運営免許を別の施設に譲渡できるようにする。

 ●  フロリダ産馬を対象とする1,400万ドル(約2億1,000万円の生産者賞と賞金への助成)の配分方法を、フロリダ州賭事規制委員会に監督させるための具体的な法文を追加する。

 「この法案によって、成功を収めたフロリダ産馬の所有者と生産者は、現在管理費と諸経費に費やされている数百万ドルを直接手にすることができるようになります。同時に、登録業務やフロリダ生産馬と種牡馬の登録を担うフロリダ州サラブレッド生産者・馬主協会(FTBOA)の役割を維持するものでもあります」とアンダーソン氏は述べた。

 これらの修正案を全会一致で受理した後、委員会メンバーは、法案に反対しているフロリダ州サラブレッドコミュニティーの16人から意見を聞いた。獣医師、調教師、馬主、生産者、セリ会社の幹部、牧場所有者の家族などである。

 彼らは皆、ガルフストリームパーク競馬場に競馬開催を行う義務を課さずにカジノ運営を認めると、最終的にストロナックグループは競馬場を閉鎖しカジノだけを運営することになり、サラブレッド生産や競馬に従事する34,000人以上の雇用と32億4,000万ドル(約4,860億円)以上の競馬産業が危険にさらされるとの懸念を表明した。

 今年初めの会合で1/STレーシング社の代表は、ハランデールビーチにあるガルフストリームパーク競馬場の土地はあまりにも高価格であるため、デカップリングが許可されたのに競馬開催が継続されるというのは保証できないと競馬関係者たちに伝えた。

 米国競馬の殿堂入りを果たしているマーク・カッセ調教師は次のように述べた。「南フロリダで競馬がなくなれば、州の競馬産業全体に衝撃が走り、農業(馬産業)が脅かされ、馬の価値自体も下がるでしょう。その影響はフロリダ州に壊滅的な打撃を与えるだけではなく、広範囲に及んでいくに違いありません。ハランデールビーチにホテルやカジノをひとつ増やすことが、フロリダ州の田舎の何万人もの生活を支える産業を破壊するに値するのでしょうか」。

 フロリダ州サラブレッドホースメン協会のチェスター・ビショップ副会長は、この法案は競馬関係者から賞金交渉に関与する能力を奪い、生産者の資金調達方法を変えるものだと述べた。

 「委員会は詳細まで検討する必要があります。私たちに必要なのは真剣に話し合える相手であり、そのための努力に十分考慮してきたとは思えません」。

 オカラブリーダーズセールスカンパニー代表のトム・ヴェンチュラ氏は、委員会はサラブレッド競馬とゲーム収入を結びつけてきたこれまでの歴史を認識する必要があるとして次のように述べた。

 「賞金と生産者賞の重要性は、フロリダ州のサラブレッド産業の成功に不可欠なものとして、長い間法令で認識されてきました」。そしてガルフストリームパーク競馬場は、カジノを運営するために有効なパリミュチュエル方式の馬券発売許可の保持を要求する最初の2005年ゲーミング法を支持し、さらにゲーミング収入の一部を賞金と生産者賞に充てることについても支持をしたのだと指摘した。

 「しかし、今となってガルフストリームパーク競馬場(1/STレーシング社)はその取り決めを反故にしようとしています。この法案は、直ちにスロットマシンとカードルームからの資金供与の義務を停止し、サラブレッド競馬を開催する競馬場がこれらの賭事事業を継続するために実施しなければならない競馬開催日数を減らすものです」。

 「ガルフストリームパーク競馬場と1/STレーシング社が競馬から手を引き、その所有地を開発し売却することは、確かに彼らの権利ではあります。しかし、ギャンブル運営の特権を得るために重要なパートナーであった競馬関係者の犠牲のもとに、スロットマシンとカードルームの運営権と共に立ち去る権利は、彼らには無いですし、あってはなりません」とベンチュラ氏は語った。

 この証言は、委員会の何人かのメンバーを揺さぶった。

 クリスティン・ハンショフスキー民主党筆頭下院議員は次のように述べた。「採算が合わないかもしれない事業を民間企業に強制するのは、立法府の責任ではありません。私は自由市場を信じますが、あなたが協定を結ぶ時、それはあなたの責任において結ばれた協定であるとも考えます。私たちは、スロットマシンやカードルームを運営している会社に対して、これらを自分たちで築き上げた今、今度は競馬をやりなさいと強制するつもりはありません。彼らは競馬のおかげで、収益性の高いゲーミング事業を手に入れたにすぎないのです」。

 ハンショフスキー議員は業界の利害関係者に、正直で思慮深い話し合いを持ち、別の解決策を探すよう勧めた。

 デビッド・スミス下院議員は、委員会に入った時は、この法案を支持し、その内容を真に理解していると感じたという。そしてこの証言を聞いた。

 「委員会で今日の素晴らしい証言を聞くまでは、デカップリングが認められたら何が起きるかについては誰も説明してくれませんでした。私は7回の立法議会で一度もやったことのないことをするつもりです。つまりこの法案を十分に理解しているとは思えないので、否決するつもりです」と、スミス議員は話した。

 証言の後、アンダーソン議員は委員会メンバーに対し、自ら業界のリーダーたちに接触し、すべての人のためになるプランを出すよう求めたことを強調した。

 「しかし、私がプランを受け取ることはありませんでした。その代わりに、各協会は法案とただひたすら戦うためにロビイストのチームを雇いました。生産者、調教師、馬主といった、彼らが代表するはずの人たちに投資する代わりに、なぜロビー活動にお金を使うのか私は不思議でした」。

 アンダーソン議員は、下院法案105は賭事補助金をどのように扱うべきかを規定し、適切な者の手に委ねていると述べた。そして、フロリダでサラブレッド競馬が終わってしまうとしたら、それは失態だろうと付け加えた。

 「この法案は、そのようなことが起こらないよう、立法権を尽くして慎重に作られたものです。もし競馬の運営をやめたいと考える競馬場があった場合、その運営免許を他の施設に譲渡できるような道筋が用意されています。5年間の見通しを提供します。早期に警告を発することで、グループで集まって計画を練ることが出来ます」。

 フロリダ州サラブレッド生産者・馬主協会(FTBOA)のCEOであるロニー・パウエル氏は、この法案が前進したことに非常に失望していると述べ、今回の変更のいずれもが競馬コミュニティとの妥協と解釈されるべきではないと付け加え、次のように述べた。

 「はっきり申し上げて、今回の下院法案105の変更は妥協案ではなく、フロリダの重要なサラブレッド産業の存続を危うくするものです。我々への反対派がどのようにごまかそうとしても、この法案は競馬開催をゲーム賭事要件から切り離すものです。このことは、今日証言してくれた牧場や厩舎の熱意溢れる競馬関係者や女性たちを含め、この産業に献身的に従事する勤勉なフロリダの人々にとって、レースの減少、雇用の減少、機会の減少を意味します」。

 「この法案が可決されれば、州経済全体に波及し、主要産業が壊滅し、フロリダの雇用と馬が他州に流出し、我々のドルがトロントに流れることになります。何世代にもわたってフロリダ経済の原動力となってきた競馬産業を、悪しき利権主義的な政策によって解体させてはなりません」。

By Eric Mitchell

(1ドル=約150円)

[bloodhorse.com 2025年3月17日「Florida House Committee Moves Decoupling Forward」]