海外競馬情報 2025年01月16日 - No.2 - 2
2025年は英国競馬界にとって変化の年となる(イギリス)【開催・運営】

 英国競馬界にとって、直近12ヵ月間は残念ながら進展を欠くものであったが、2025年は間違いなく変化の年になる。

 その変化の多くは新たにこのスポーツの上層部に就任する人材によってもたらされることになろう。しかし、この時期までに就任が期待された新メンバーの幾人かはいまだに決まっていない。

 少なくともBHA(英国競馬統括機構)の次期会長は決まっている。労働党の貴族院議員であるアレン卿が、本年6月初めにジョー・ソーマレズ-スミス氏の後任として会長に就任する予定である。

 しかし、彼とともに働くことになる最高経営責任者がいまだに確定していない。この組織の規制担当の責任者であるブラント・ダンシー氏が、退任したジュリー・ハリントン氏の職務を最高経営責任者代理として引き継いでいるものの、人選は継続中である。

 正式な最高経営責任者が不在のまま運営されている英国競馬界の重要機関は、BHAだけではない。英ジョッキークラブでは、クリスマス直前にネヴィン・トゥルーズデール氏が退任したため、チャーリー・ボス氏が臨時の最高経営責任者に就任した。

 また、競馬賭事賦課公社(Levy Board)でも、昨夏に会長ポール・ダーリン氏が亡くなったため、2025年に同組織の次期会長を決定する予定となっており、政府はクリスマス前に公募を開始した。

 こうした重要な役職の頻繁な入れ替わりが大きな要因となって、英国競馬の直面する多くの問題、すなわち賞金水準、発売金の減少、入場人員の減少、能力の高い馬の流出等への取り組みの明確な進展が妨げられた言えるだろう。

 2025年になっても、多くの代理や暫定の役員がいることで、今後数か月間も進展が遅いのではないかという懸念が生じている。

 しかし、このスポーツが何らかの進展を遂げねばならぬという状況は切迫したものとなっている。

 これは、馬主協会(ROA)の会長であるチャーリー・パーカー氏が今月同協会の表彰式でのスピーチの際に強調した点だ。 

 「2025年には競馬界でこれまで議論してきたいくつかの構想を具体化しなければならないことは明らかである」と、パーカー氏は来賓に語った。

 「競馬賭事賦課の改革、賭事委員会による賭事客への経済力チェック対策の茶番劇の終結、競馬商品の適切なプロモーション、そして何よりも重要なのは、新たな投資の呼び込みです。これらすべてが「やるべきことリスト」に載っています」

 パーカー氏は、2025年の英国競馬が直面する主な問題を概説している。

 まず、競馬賭事賦課の改革は、2024年に決着がつくはずだったが、長引いてしまった。

 この場合、遅延の責任を競馬界だけに押しつけることはできない。むしろ、ブックメーカーとほぼ合意に達したと思われた時期に、総選挙の実施を決めたリシ・スナク元首相率いる官邸の責任である。

 賭事賦課の合意では、スポーツ振興のための資金が提供され、それが発売金と観客動員数の増加につながることが期待されていた。

 政府の政権交代により、協議は最近になってようやく再開されたところだ。競馬と賭事委員会の両者は、議会が休会する前に賭事担当大臣トウィクロス女男爵に報告を行う予定となっていた。

 英国競馬界は、早期のクリスマスプレゼントとして合意が成立することは期待していなかったが、特に今後1年間に賭事運営会社が数々の規制上の課題に直面することが予想されるため、合意成立にはまだしばらく時間がかかりそうである。

 次に、外部からの投資についてだが、「プロジェクト・ペース」と呼ばれる計画の実現が大いに期待されている。英国のおよそ40に上る主要な平地開催をひとつの会社へと統合し、その商業的価値を最大限に活用することで、新たな英国競馬の一流商品を見出し、開発することを目的とするものだ。

 これと並行して、顧客の関与、成長、維持を検討する「プロジェクト・ビーコン」と呼ばれる別の取り組みも進行中であり、こちらも実現が待たれている。

 そしてパーカー氏の言及した「賭事客への経済力チェック」も、2025年に山場を迎える大問題である。これは賭事業界全体が関わる問題の一つだが英国の競馬には多大な影響を与えるものだ。

 賭事委員会は、いわゆる「摩擦のない経済力チェック」、または規制当局が呼ぶところの「財務リスクチェック」の試験運用を8月に開始し、6~7ヶ月間実施する予定である。

 賭事委員会は、本当に「摩擦のない」チェックでなければ導入しないとしているが、英国競馬界のリーダーたちは、規制当局が自分たちの宿題を自分で採点することは許されないという大前提を大臣たちに力説する必要がある。

 また、賭事運営者も2025年には、賭事による弊害の研究、防止、治療に1億ポンド(約190億円)を調達することを目的とした法定賦課金の導入に直面することになる。この財政的な打撃により、競馬の発売金への賦課金に基づく支出の拡大に対して彼らは消極的になっていくだろう。

 もう一つの潜在的な大きな問題は、2024年の英国賭事調査(GSGB)の発表である。

 7月に発表された最初の年次GSGBは、賭事に関する新たな公式統計という売り込みだったが、明確さよりも混乱を招く結果となった。

 この調査には、それまでの「ゴールドスタンダード」であったNHS(国民保健サービス)の健康調査で報告されていた数値よりもはるかに高いギャンブル依存症の数値が含まれていたが、委員会自身もその数値は誇張されている可能性が高いことを認め、過去の調査結果と比較すべきではないと述べた。

 しかし、賭事改革を求める人々はそうした比較を行なってきており、次のGSGBでは、特に賭事広告に関する規制のさらなる強化を求める声が再び高まる可能性がある。

 したがって、今後12ヶ月間は英国競馬が直面する多くの課題が顕在化することになるだろう。

 しかし、明るい兆しも見えている。パーカー氏が馬主協会賞の席で語ったように、新しい顔によって英国競馬の組織が率いられるとき、「変化によって、多くの組織やこのスポーツ全体で優先事項がリフレッシュされ、リセットされるチャンスがある」のである。

 2025年には、そのチャンスが活かされることを期待したい。

By Bill Barber

(1ポンド=約190円)

[Racing Post 2024年12月30日

「For good or bad, 2025 cannot help but be a year of change for British racing」]