海外競馬情報 2025年02月27日 - No.8 - 2
骨折リスクに関与する遺伝子を特定(イギリス)【獣医・診療】

 イギリスの王立獣医学校(RVC)が行った新たな研究によると、サラブレッドの骨折リスクに関与すると見られる遺伝子が100以上特定された。この発見は、遺伝的危険因子に関する更なる研究の一助になると同時に、馬の健康と福祉についての取り組みや骨折リスクを低減するための新たな治療開発に貢献し、支援するものとなるだろう。

 骨に強い負荷が掛かることから、サラブレッド競走馬が骨折を負うことは珍しくない。悲しいことに、骨折は安楽死措置の主たる理由となっており、イギリスの競馬場では毎年約60頭の馬が骨折による死を余儀なくされている。しかし、骨折とは複雑な病態であり、環境要因と遺伝的因子の両方がその馬の骨折リスクに影響するのだ。

 RVCの上席研究員であるデビー・ゲスト博士が率いる研究チームは、骨折リスクの遺伝子リスクスコアを用いて、リスクの高い馬と低い馬の骨形成細胞を幹細胞の活用により作成する新しいモデルを確立した。同チームは、リスクの高い馬と低い馬の骨細胞で発現レベルが異なる遺伝子を特定するため、細胞で発現するすべての遺伝子を測定した。

 この研究では、骨折リスクに関与する可能性のある112の遺伝子が同定され、これらの遺伝子の多くが骨基質を制御していることが示された。しかし、その多くの遺伝子はこれまで骨での研究が行われたことがなく、骨細胞におけるこれらの遺伝子の機能と骨折リスクへの寄与を理解するためにはさらなる研究が必要である。

 今回の研究は、骨折リスクの背後にある遺伝的メカニズムを探る一連の研究の第2弾として位置付けられている。以前の研究では、正常な骨形成に必要な遺伝子であるⅢ型コラーゲンが、遺伝的に骨折リスクの高い馬の骨細胞では発現量が低いことが判明した。これは、Ⅲ型コラーゲンの産生量を制御する領域のDNA配列に変化があるためである。

 現在、このリスクスコアリングシステムを検証するために別の対照群の馬で追加研究が行われている。このシステムと細胞モデルを用いてさらに研究を進めることで、他の遺伝子やプロセスを特定し、ある馬が他の馬よりも骨折しやすい理由について理解を深めることが出来る。また、獣医師がサラブレッドに対して行うサポートや治療の改善にもつながるだろう。

 デビ―・ゲスト博士は次のように語った。

 「数々の競馬場が何年も掛けて環境面でのリスク要因を減らしているのにも関わらず、骨折は競走馬にとって一般的な問題となっています。骨折のリスクには遺伝的要素があることが分かっており、我々は以前、よりリスクの高い馬を特定できるよう骨折の遺伝子リスクスコアを開発しました」

 「我々は今回の研究で、ハイリスク馬の骨細胞で発現が変化している遺伝子を新たに多数同定しました。これらのうちいくつかは、骨基質を制御する役割を担っていることがわかりました。これにより、ハイリスク馬の骨組織がどのように変化しているのかをより深く理解し、リスクを軽減するための新たな介入方法を開発することができます」。

Edited Press Release

Royal Veterinary College

[bloodhorse.com 2025年2月5日「Study Identifies Possible Fracture-Risk Genes」]