AIが日本の競走馬の調教に革命を起こし始めている。この技術的な後押しを主導する企業の創業者は、AIを使った技術こそが、日本馬による待望の凱旋門賞初勝利につながると信じている。
馬の脚に取り付けられたセンサーからデータを取得し、馬の動きや心拍数、心電図のデータを測定する。そのデータは調教師のスマートフォンに送られ、潜在的な怪我のリスク、おすすめの調教内容に加え、レース計画の一助となる推奨される距離や馬場に関する情報も提供する。
エクタム(Equtum)というこの競走馬管理クラウド技術を使い始めた調教師たちは、データ主導に切り替えたことで馬のパフォーマンスが向上したと早速評価している。その例として、ニシノエージェントは、先月中山競馬場で行われた京成杯(G3)で勝利し、クラシックの有力候補の一頭に躍り出た。
エクタム創設者の大島秀顕氏は次のように述べている。「AIは馬づくりのあらゆる側面に影響を与えるでしょう。これまでは見えなかった馬の状態を明らかにし、人と馬のつながりを深めます。調教を通して、怪我のリスク、将来の可能性、成長の機会を知ることができます。ビデオ解析のような新しい技術はホースマンシップ(馬を管理・調教する技術)を進歩させます。収集されたデータを活用することで調教技術が数値化され、改善点が提案されます。そうすることで、競馬がこれまで以上に魅力的なものになり、ファンにとっても身近なものになるでしょう」
「私たちは日本馬の凱旋門賞制覇をサポートすることを目指しています。まだ具体的な候補馬は挙がっていませんが、実現は可能だと考えています。私たちの豊富なデータがあれば、パリロンシャン競馬場に適した馬を特定することが出来るでしょう。このデータとAIを駆使することで、凱旋門賞制覇の可能性が高い馬の選定と準備をサポートしていきます」。
大島氏によれば、ヨーロッパではすでにこのテクノロジーに対する関心が高まっているとのことだが、イギリスでは以前から多くの調教師がストライドの長さ(歩幅)や心拍数などのデータを活用している。
大島氏は以下のように続けた。「ヨーロッパで関心を持たれていることを嬉しく思います。現在は日本国内で活動していますが、今後はグローバルな展開を目指しています。海外馬・日本馬に関わらず国際競走に挑戦する馬と、日本国内で走る馬の両方をエクタムでサポートし、最適な判断を下せるようにしたいと考えます」
「従来は勘と経験に頼っていた分野に、客観的な指標を導入していることが大きなアドバンテージです。これにより共通理解の下で、一層効率的で建設的な議論が可能となり、最適な調教プランとレースのローテーション計画の策定につながります」
「心拍数、ピッチ(脚の回転)、ストライドのデータは、距離適性や馬場適性の決定に役立ちます。時には長距離血統の馬に、中距離やマイルのレースを勧めることもあります。今後のデータ蓄積により、怪我の予防も可能になるかもしれません」。
By James Stevens
[Racing Post 2025年2月27日
「How Japan is using AI to train racehorses and assist data push to find perfect candidate for Arc breakthrough」]